2026.10.26
表面利回り8%でも儲からない?一棟収益不動産で見落としがちな支出
高利回り=高収益とは限らない。不動産投資で本当に見るべき数字とは。
不動産投資において、物件選びの重要な指標となる「表面利回り」。
物件情報を比較する際、利回り6%の物件よりも8%、8%よりも10%の物件に魅力を感じる方は少なくありません。
しかし、表面利回りが高い物件ほど、必ずしも多くの利益を生み出すわけではありません。
むしろ、高い利回りには、それ相応の理由が存在することがあります。
不動産投資において、利回りは収益性を示す指標であると同時に、リスクを考えるための指標でもあるのです。
1.表面利回り8%は、8%の利益を意味しない
表面利回りは、年間の想定賃料収入を物件価格で割って算出します。
表面利回り(%)=年間賃料収入 ÷ 物件価格 × 100
例えば、8,000万円の一棟アパートから年間640万円の賃料収入が得られる場合、表面利回りは8%となります。
しかし、この640万円がそのまま投資家の利益になるわけではありません。
不動産を所有する以上、さまざまな維持管理費用が発生します。
また、融資を利用して購入した場合には、毎月の借入返済も必要です。
表面利回りは、こうした支出を差し引く前の数字です。
そのため、物件の収益性を判断するには、表面利回りだけでなく、実際に手元に残るキャッシュフローを確認する必要があります。
2.一棟収益不動産で見落としがちな支出
一棟マンションや一棟アパートの運営では、主に以下の費用が発生します。
- 固定資産税・都市計画税
- 賃貸管理委託費
- 共用部分の電気代・水道代
- 消防設備点検費用
- 共用部分の清掃費用
- 入居者退去時の原状回復費用
- 入居者募集に伴う広告費・仲介関連費用
- 設備の修理・交換費用
- 外壁塗装や屋上防水などの大規模修繕費用
特に注意したいのは、毎月発生する費用だけでなく、数年から十数年単位で発生する修繕費用です。
例えば、給湯器やエアコンの故障、屋上防水の劣化、外壁の補修などは、建物の築年数が経過するにつれて発生する可能性が高まります。
購入時点で大きな支出がなくても、将来の修繕費を考慮しなければ、正確な収益性を判断することはできません。
3.表面利回り8%の物件で、実際にいくら残るのか
ここで、8,000万円の一棟収益物件を購入した場合を考えてみましょう。
以下は、収支構造を理解するための仮定のシミュレーションです。
| 項目 | 年間金額 |
|---|---|
| 想定賃料収入 | 640万円 |
| 運営経費・修繕積立等 | ▲160万円 |
| 営業純収益(NOI) | 480万円 |
| 借入返済 | ▲360万円 |
| 年間キャッシュフロー | 120万円 |
表面利回りは8%ですが、借入返済後の年間キャッシュフローは120万円です。
購入価格8,000万円に対して、年間の手残りは1.5%相当となります。
さらに、空室の発生や想定外の修繕費、税金などによって、実際の手残りは変動します。
なお、借入返済には元本返済も含まれるため、キャッシュフローと会計上の利益は同じではありません。また、物件取得時の諸費用や税引後の収益も別途検討が必要です。
重要なのは、「表面利回りが何%か」ではなく、「さまざまな支出を考慮した結果、どれだけの収益が残るのか」という視点です。
4.利回り13%の中古物件と、6.5%の新築物件。どちらが儲かるのか
以前、お客様から興味深いお話を伺ったことがあります。
そのお客様は、表面利回り13%の物件と、表面利回り6.5%の新築物件を比較した際、結果として新築物件の方が儲かったという経験をお持ちでした。
数字だけを見ると、13%と6.5%では利回りに2倍の差があります。
しかし、不動産投資の収益は、購入時の表面利回りだけで決まるものではありません。
築年数が経過した物件では、設備交換や大規模修繕の費用がかさむことがあります。
また、賃貸需要が弱い立地であれば、空室期間が長期化したり、入居者募集のために賃料を下げたりする必要が生じる可能性もあります。
一方、新築物件は購入価格に対する利回りが低くても、当初の修繕負担が比較的小さく、設備や間取りが市場のニーズに合っていれば、安定した賃貸運営につながることがあります。
もちろん、新築だから必ず儲かるわけではありません。新築時の賃料が将来も維持できるとは限らず、購入価格や融資条件によってはキャッシュフローが厳しくなるケースもあります。
今回のお客様の経験は、すべての新築物件が高利回りの中古物件より優れていることを意味するものではありません。
ただ、そこには不動産投資の本質が表れています。
利回りが高いことと、最終的に多くの利益を得られることは、必ずしも一致しないのです。
5.なぜ利回りの高い物件が存在するのか
不動産の利回りは、賃料収入と売買価格の関係によって決まります。
同程度の賃料収入が得られる物件でも、売買価格が低ければ表面利回りは高くなります。
では、なぜ価格が低くなるのでしょうか。
その背景には、さまざまな要因があります。
例えば、駅からの距離、人口動態、賃貸需要、建物の築年数、修繕履歴、融資の付きやすさ、将来の売却のしやすさなどです。
投資家がこうした要因をリスクとして認識すれば、購入価格に対して高い利回りを求めることがあります。
つまり、高利回りは単なる割安さではなく、市場がその物件に対して一定のリスクを織り込んでいる可能性もあるのです。
ただし、売却事情などによって価格が抑えられている物件もあり、高利回りが必ずしも高リスクを意味するわけではありません。
大切なのは、その利回りがなぜ成立しているのかを分析することです。
6.購入時の利回りだけでなく、出口戦略まで考える
不動産投資の最終的な収益は、保有期間中の賃料収入だけで決まりません。
将来、その物件をいくらで売却できるのかという「出口戦略」も重要です。
例えば、購入時に高い利回りを確保できたとしても、保有期間中に建物の老朽化が進み、売却時に買い手が限られる可能性があります。
逆に、購入時の利回りが比較的低くても、賃貸需要が安定した立地で適切な維持管理を続けることにより、資産価値を維持しやすい物件もあります。
また、売却時には市場金利や金融機関の融資姿勢も価格に影響します。
そのため、購入時には次の3つを総合的に検討する必要があります。
① インカムゲイン
保有期間中に得られる賃料収入から、運営費用や借入返済などを差し引いたキャッシュフロー。
② キャピタルゲイン・ロス
売却価格と取得価格の差額に加え、取得・売却に伴う諸費用などを考慮した損益。
③ リスクと資産価値
将来の賃貸需要、修繕負担、融資環境、売却のしやすさなど。
これらを総合的に判断してこそ、物件の本当の投資価値が見えてきます。
7.まとめ|利回りは「結果」ではなく「判断材料」
表面利回りは、不動産投資において欠かせない指標です。
しかし、利回りの数字だけで物件の優劣を判断することはできません。
高利回りの物件には、高い収益を得られる可能性がある一方で、修繕費用や空室、資産価値の下落といったリスクが存在する場合があります。
反対に、表面利回りが低い物件であっても、安定した賃貸需要や適切な維持管理、良好な融資条件などによって、結果的に高い投資成果を得られる可能性があります。
不動産投資で重要なのは、目先の利回りを追うことではなく、リスクに見合った収益を、どれだけ安定的・継続的に確保できるかということです。
EXEELでは、一棟マンション・一棟アパートを中心に、表面利回りだけでなく、賃貸需要、運営費用、修繕計画、資産価値、将来の出口戦略までを見据えた物件評価を大切にしています。
数字の高さだけにとらわれず、その数字の背景にある価値を見極めること。
それが、長期的な資産形成につながる不動産投資の第一歩だと考えています。
※本記事の収支シミュレーションは説明用の仮定であり、特定の物件の収益を保証するものではありません。実際の投資判断にあたっては、物件ごとの収支、融資条件、税務上の取扱い等をご確認ください。