2025.07.09

富裕層の”教育資産”×不動産

かつて「教育は郊外、住まいは通勤圏内」という価値観が主流だった日本において、現在では富裕層ファミリーの住宅選びに大きな変化が起きている。とりわけ東京の高級レジデンス市場では、教育環境とアクセス性を兼ね備えた住まいが、いわば“教育資産”として位置付けられつつある。これは単なる利便性の追求ではなく、「子どもの未来を支える資産」として住まいを再定義する視点である。

本稿では、インターナショナルスクールや私立中高一貫校、大学進学環境などの要素と、都心高級レジデンス市場の動向とを結び付けながら、富裕層の新たな“教育戦略”について考察する。

1. インターナショナルスクール×都心高級レジデンスの親和性

東京23区内には、60校を超えるインターナショナルスクールやバイリンガル教育機関が存在し、その多くが港区・渋谷区・目黒区・世田谷区に集中している。たとえば、広尾のSeisen International Schoolや、白金台のInternational School of the Sacred Heart、麻布台のThe British School in Tokyo Azabudai Campusなどは、いずれも富裕層が多く居住する高級住宅街に隣接している。

こうしたスクールの生徒層は、多国籍企業の駐在員や、国内富裕層の子女が中心である。彼らにとって“通学圏内にある高級レジデンス”は、移動時間の短縮、安心・安全な環境、教育機関との連携のしやすさといった点で、非常に高い価値を持つ。

近年では、インターナショナルスクールのスクールバスが発着する物件があらかじめ設定されており、そのルート上にあるレジデンスは市場価値が上昇傾向にある。これは「教育×交通動線」が住まいの選定基準に組み込まれてきた証左でもある。

2. 中学受験という選択と“教育密集エリア”の再評価

東京都心部では、依然として中学受験熱が高く、都内の小学6年生のおよそ17〜18%が私立・国立中学を受験している。港区・文京区・渋谷区・新宿区といった都心4区においては、教育密集度の高さが顕著であり、有名中高一貫校のキャンパスが徒歩・自転車圏内に複数存在する。

たとえば、麻布中学・女子学院・雙葉・暁星・慶應義塾中等部など、長年にわたり難関校として知られる中学は港区や千代田区に集積しており、受験生ファミリーにとって「自宅からのアクセス性」は極めて重要だ。特に、冬季の通学、夜間の塾通い、セキュリティ面を考慮すると、徒歩圏またはタクシーで10分圏内という条件は、精神的・時間的コストを軽減する。

こうした観点から、教育資産エリアとしての「麻布十番」「白金高輪」「市ヶ谷」「御茶ノ水」などの人気は再燃している。単に“おしゃれな街”ではなく、“進学実績が地続きにある街”という意味で、住まいと教育の統合的評価が進んでいるのだ。

3. 国立大学進学と住環境の関係──文京区という例外的価値

もう一つ見逃せないのが、東京大学、東京工業大学、一橋大学、東京学芸大学といった国立難関大学の附属中高が存在することだ。特に筑波大学附属中学や東京学芸大学附属世田谷中学などは、「通学しやすい文京区・世田谷区・杉並区」に強い人気を持つ。

たとえば文京区は「文の京」と称されるだけあって、東京大学本郷キャンパスを中心とした教育都市としての顔を持つ。国立・私立ともに学力レベルの高い学校が多く、教育意識の高いファミリーが集中しているエリアだ。

また、教育費を住宅に転化するという発想──たとえば、「月30万円の学費を無償教育にまわし、その代わりに高水準なレジデンスに投資する」といった思考回路も、一定層の間で広まりつつある。これは“教育と不動産”の組み合わせを、単なる並列ではなく「教育資産」として捉える動きの一つである。

4. 交通利便性・治安・教育支援体制の三位一体

子育て世帯にとって、都心レジデンスの利点は単に“教育機関への距離”にとどまらない。むしろ、

  • 都営・メトロを中心とした公共交通機関の利便性
  • 医療施設の充実
  • 区主導による教育支援体制(英語プログラム/送迎補助)
  • 商業施設と生活インフラの融合 など、複合的な生活利便性が評価されている。

たとえば、港区や千代田区では英語を軸としたプログラムが行政主導で提供され、地域一体となった教育支援が展開されている。これにより、インターナショナルスクール生やバイリンガル育成を目指す家庭にとって、「行政と物件の両面からの安心」が担保されている。

また、防犯意識の高さも重要な要素である。都心高級レジデンスでは、24時間有人管理、ゲーテッドアクセス、車寄せなど、家庭内の安全性が極限まで担保されており、子どもが独りでの登下校をするうえでの信頼性がある。

5. 「住む」から「育てる」へ──レジデンスが変える未来像

富裕層にとって、住まいとは資産価値の担保に加えて、子どもの未来を形づくる舞台装置でもある。単に“高額な住居”ではなく、“知的な資本形成ができる場”としての意味づけが強まりつつある。

たとえば、麻布台ヒルズレジデンスでは、共用部に学習スペースや読書ラウンジを設けるなど、生活と学習の垣根を取り払う設計思想が採用されている。さらに、国際的な教育機関との連携を視野に入れた居住者限定のスクールガイドや送迎サービスを提供する物件も登場している。

こうした取り組みは、将来子どもが国内外の名門校へ進学する際の“基盤”を整えると同時に、住まいそのものが教育的価値を持ちうることを実証している。

まとめ:教育はもはや「投資対象」──レジデンスが担う戦略資産

教育と住まいの関係は、もはや機能的な近接性を超え、“戦略的資産構成”の一環として考えられている。東京都心における高級レジデンスは、学びの環境、安全性、交通の利便性、生活インフラの充実度を統合した「教育資産」として進化している。

とりわけ富裕層ファミリーにとって、“どこに住むか”は“どんな未来を子に託すか”と同義であり、その判断の結果として、教育環境と連動した高級レジデンスが選ばれている。

次世代を見据えた不動産選び──それは資産防衛であると同時に、「人生の設計図」を描く選択なのである。


港区から世界のエンドユーザーへ!を掲げ、港区を中心とした高級不動産に関するコラムを執筆中。
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