2025.07.23
再開発“特区”🏗️虎ノ門・麻布台・竹芝編

2020年代の東京は、都市機能の再設計と住宅市場の革新が同時進行する、かつてない転換点に立っている。とりわけ、虎ノ門、麻布台、竹芝といった都心部の再開発プロジェクトは、単なる建て替えや商業集積を超えた「都市の特区化」を体現しており、住宅・文化・インフラを一体的に構想する未来都市の雛形として注目を集めている。
本稿では、それぞれの地域の再開発事例を比較・検討しながら、国際的ラグジュアリーシティとしての東京がどう変貌しつつあるのかを描き出す。

1. 都市の課題と再開発の意義
東京は依然として世界最大級の都市圏だが、高度経済成長期に築かれた都市インフラや住宅ストックが老朽化し、国際競争力や居住快適性の面で課題を抱えている。加えて、少子高齢化、人口減少、気候変動対策など、中長期的な都市課題への対応が急務である。
このような背景のもと、東京都と大手デベロッパーは、「再開発」を単なる建て替えや容積率の活用にとどめず、都市そのものを高度化・複合化する戦略的ツールとして位置づけるようになった。
2. 虎ノ門・麻布台:国際都市の新たな中核
虎ノ門・麻布台エリアは、森ビルが主導する再開発により、「国際都市東京」の中核として再構築されつつある。とりわけ2023年に竣工した麻布台ヒルズは、延床面積約86万平米、総事業費約6400億円という日本屈指のメガプロジェクトだ。
住宅1,400戸に加え、オフィス、ラグジュアリーホテル(アマン東京の新業態)、商業施設、インターナショナルスクール、医療センター、大規模緑地(24,000㎡)などを一体的に整備。デザインにはヘザウィック・スタジオ、建築には槇文彦や隈研吾といった世界的建築家が関わり、世界基準の都市空間が構想された。
このエリアは、「高層ビルによる密集」ではなく、「歩行者中心の都市構造」「自然と共存する都心生活」というコンセプトで設計されている点が特徴で、従来のタワーマンション開発とは一線を画している。
3. 虎ノ門ヒルズ:グローバルビジネスハブの構築
麻布台と隣接する虎ノ門ヒルズエリアでは、同じく森ビルによる段階的な再開発が進行中で、2023年には「ステーションタワー」が竣工。敷地面積7.5haにわたって、ホテル(アンダーズ東京)、カンファレンス施設、ラグジュアリー住宅、店舗、地下鉄新駅を含む大規模複合開発が整備され、グローバル企業の誘致を図る都市基盤が形成された。
このプロジェクトは、国際金融都市・東京の中核拠点と位置づけられ、金融・スタートアップ・外資系企業の拠点形成が期待されている。まさに「住む場所」と「働く場所」が重なる新たな都市モデルである。
4. 竹芝・ウォーターフロントの再定義
東京湾岸エリアでは、東急不動産が主導する竹芝再開発(ウォーターズ竹芝)が進行。延床面積約180,000㎡のオフィス・商業施設・劇場・レジデンスを備えた複合開発で、JR浜松町駅および竹芝駅と直結するアクセス性も魅力である。
さらに、築地市場跡地を含む大規模再開発も進行中であり、約19ha・延床面積約117万㎡・事業費約9000億円規模という国家的プロジェクトが控えている。ここにはスタジアム、文化施設、住宅、ビジネス拠点などが複合整備され、2020年代後半の東京を象徴する新都心となる見込みだ。
竹芝は、「文化と海辺と共存する都市生活」の実験場として、また観光・国際交流の拠点としても大きな可能性を秘めている。
5. 再開発がもたらす“都市の特区”構想
これらの先進事例に共通するのは、「住・商・業・教育・医療・文化」が一体化した都市機能の複合化である。つまり、従来のゾーニングを超えた“都市の特区”が、東京の中心にいくつも誕生しているということだ。
これにより、
- 国際ビジネス人材が短期でも快適に滞在可能
- 外国人富裕層が安心して資産保有・移住できる
- 都市に暮らす日本人も、世界基準の住まいと教育を享受 といった、多層的な恩恵が生まれつつある。
再開発は、容積率緩和や税制優遇を通じてデベロッパーにとっては商機であり、都市にとっては課題解決の手段であり、住民にとっては新たな暮らし方の提案でもある。
まとめ:未来都市・東京の方向性
虎ノ門、麻布台、竹芝──この3つの再開発は、それぞれ異なるコンセプトを持ちながらも、共通して「都市の再定義」に挑んでいる。
高度経済成長期の延長ではない、サステナブルかつグローバルな都市像。その実現に向けたヒントが、こうした再開発に凝縮されている。
今後は、晴海フラッグや有明ガーデン、築地・勝どきといった湾岸部にも開発の波が広がり、「都市全体が住まいの選択肢になる」時代が訪れるだろう。
そしてその時、都市が提供するべき価値とは──生活空間としての快適性を超えた、「生きる都市」としての総合力なのかもしれない。
港区から世界のエンドユーザーへ!を掲げ、港区を中心とした高級不動産に関するコラムを執筆中。
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【出典URL一覧】
1. 東京都の都市再生・再開発に関する総合情報
2. 虎ノ門・麻布台ヒルズ再開発
3. 竹芝エリア再開発(ウォーターズ竹芝など)
- 東京都港湾局「竹芝地区の再開発プロジェクト」
- JR東日本「WATERS takeshiba」
- 東急不動産・鹿島建設など「竹芝地区開発計画」PDF資料
4. 各エリアの開発規模・延床面積・機能構成な
- 森ビル プレスリリース(麻布台ヒルズ開業概要)
- 森ビル「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー概要」
- ウォーターズ竹芝・開発概要